日本選手権・スタンダードの考察　その4-赤と緑と何か-

2006年8月30日戦略記事・読み物

○クロックなんちゃら
鳥にエルフに猿。ボブに忍者、ヒッピーに加えてさらにヘビ。
~~包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ。~~
1マナ圏の優秀なマナクリーチャー&パンチャー、そして2〜3マナのアドバンテージエンジン付きクリーチャーが全盛期の今、いわゆる「クロック・パーミッション」の黄金期だと言えます。
低マナ域に優秀なカウンターも揃い、引きさえ噛み合えばどんなデッキにでも勝てる、と言い切れる力がこのデッキタイプにはあると言えるでしょう。

今回はベスト8の中から山本氏と石丸氏、そして斉藤氏のデッキを見てみましょう。さすがに3デッキ分掲載するとそれだけで文章が埋まるので、デッキリストはここから確認してください。
http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgevent/jpnat06/t8decks

○エレメント
3つのデッキのメインボードに投入されているカードを以下のように分類します。
A群:1マナ圏のクリーチャー
B群:アドバンテージ担当クリーチャー
C群:妨害手段
D群:ハードクロック及びダメ押し

・シーストンピィ(斉藤)

A:《密林の猿人》《ラノワールのエルフ》《極楽鳥》
B:《オーランのバイパー》《深き刻の忍者》《三角エイの捕食者》
C:《差し戻し》《マナ漏出》
D:《曇り鏡のメロク》《荒廃の思考》

お手本のようなクロックパーミッションです。このデッキはCSの参入により《オーランのバイパー》という3マナ圏の基本クリーチャーを得ました。黒がない分ヒッピー的キャラが欠けていて寂しかったのですが、これで安定してアドバンテージを稼ぐことが可能になりました。

・クロックランデス(山本)

A:《密林の猿人》《ラノワールのエルフ》《極楽鳥》
B:《深き刻の忍者》《三角エイの捕食者》
C:《石の雨》《氷結地獄》《差し戻し》
D:《喧騒の貧霊》

さて。
さすがに最強テンポカウンターである《差し戻し》は採用されていますが、「墓地に落とす」カウンターはありません。
その代わりに採用されているのが2種類の土地破壊呪文。

クロックパーミッションは殴り続けている限り勝手にアドバンテージを稼ぐクリーチャーが主戦力です。
ならば、全体除去さえ撃たせなければ少なくともアドバンテージの面で遅れを取ることはない。土地を止めてしまえば相手はスペルが使えないのだからカウンターするまでもない。というわけで3マナランデス2種類が投入されているのではないかと思います。
《紅蓮地獄》はランデスでは間に合いませんが、一応《差し戻し》と《十手》でなんとかなる、という感じでしょうか。

メタ的に《氷結地獄》メイン搭載が許された、というのが大きいですね。今のメタでは島と平地が全く入らないデッキのほうが少ない。それでもメインに4挿しというのはなかなか勇気のある選択だと思います。
まさにメタデッキとしての立場を明確に示しているカード選択であると言えるでしょう。
相手の事故を見逃さない。事故らないなら事故らせる。コントロールにとっては悪夢のようなデッキです。

・クロック除去？(石丸)

A:《ラノワールのエルフ》《極楽鳥》
B:《闇の腹心》《オーランのバイパー》《惑乱の死霊》
C:《悪魔火》《化膿》
D:《巨大ヒヨケムシ》《鬼の下僕、墨目》《迫害》

ついにカウンターがなくなってしまいました。ランデスもありません。
クリーチャー群に目を向けてみると、なるほどいかにもクロックパーミッションです。ですがカウンターやランデスなどの直接妨害手段はなく(迫害はありますが4マナです)、普通のクリーチャー+除去のビートダウンデッキに見えます。

で、結論から言うとこれもメタデッキです。石丸氏本人が「ソーラーフレアにだけは負けないように調整した」と語っているように、アドバンテージクリーチャーの塊、除去しづらいクリーチャー筆頭のヒヨケムシに源獣、除去のフリをしつつ印鑑を壊してマナベースを狂わせる化膿、コントロールキラーの迫害に悪魔火、極めつけに墨目・・・。
コントロールを使っているプレイヤーからすれば、「いちいち対処が面倒だったりアドバンテージを持って行ったりで、やりづらいなあ」と感じるのではないでしょうか。

注目すべきはそのカード選択で、コントロールデッキが嫌がりそうなカードをしっかり選びつつ、そのどれもがビートダウン相手でも立派に機能するように組まれています。
おそらく、綿密な調整のもと細かいカード入れ替えを繰り返して組まれたデッキなのでしょう。
サイドの《死の印》も好印象。腹心で引いてもライフに優しい、その上1マナで環境の怖いクリーチャーをことごとく落とせる。
スタンダードで黒をやる上で、もはや欠かせない除去だと思います。

ヒッピー・バイパー系デッキの考察は以上。