日本選手権’08へ向けて その3 各国選手権(後半)+α
2008年8月18日○あなたを、プロテクションです
前述のように赤単が猛威を振るい始めたことが認識された少し後、コロラド州デンバーにおいてブロック構築のグランプリが行われました。そう、いきなり「+α」の部分です。
そこで優勝を果たし、さらに新たなデックタイプとして名を馳せたのが白入り「Justice」クイックン・トーストでした。
これはイーブンタイドで登場し、微妙に低額レアな臭いを醸していた《正義の執政官》をフィニッシャーに据えたクイックン・トーストの亜種です。ですが、ここで注目すべきは《正義の執政官》ではなく、このデックにメインから採用されていたあるエンチャントでした。
《ルーンの光輪/Runed Halo》。
そう、この微妙に新しい発想で作られた感じのエンチャント。今まではただの面白レア扱いですが、ついに構築で日の目を見るときが来たのです。もともと《糾弾》の使えないブロック構築環境で《復讐の亜神》を何とかする、という発想で選ばれたカードですが、いざ運用すると《霧縛りの徒党》をプレイされたら相手のマナが勝手に縛られたり、《妖精の女王、ウーナ》に殴られることもなければ能力でライブラリーを削られることもない、というフェアリー相手にも通用する副次的効果も生み出したのです。
○オランダ、イギリス
さて、話は戻って今度は英・蘭の国別選手権。
英米仏のメタを受け、さらにデンバーの結果を得て生まれた上位陣のデッキとは・・・。
・赤単
やはり当然のように残っているこのデッキ。しかし、前半の英米仏とは明らかに違う点がありました。山が全て雪に覆われています。すなわち・・・《雪崩し/Skred》。
もともと《ショック》があったスペースに完全コンパチで投入されているこのカード。忘れたころに環境に帰ってきます。ショックは本体に打つことはほとんど無く、あったとしても貢献度が薄い、ということから除去性能だけを見て《雪崩し》になったのでしょうか。
まあ、ショックでも十分除去はできますし、本体に2点でも入るのと全く入らないのには大きな違いがあるのでは・・・と思ったりもするのですが、どの赤単を見てもことごとく《雪崩し》。同系の《抉り出し》と《亜神》に触れるのが《炎の投げ槍》だけ、というのはやはり辛いんでしょうかね。あとは《霧縛りの徒党》も手札に1枚山を温存しておくだけで、相手にターンを返すことなく落とせるとか。
・スワン
既にTOP8レシピを確認された方は驚いているかもしれません。
白鳥、白鳥。大量の《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》の姿がそこにはありました。
《突撃の地鳴り/Seismic Assault》を用いた典型的なスワン・アサルトはもちろん、青赤のカウンターバーンで単純にフィニッシャーとして使用しているデッキまで。中には《結界師ズアー/Zur the Enchanter》デッキにスワンアサルトのパーツを投入し、ズアーで《突撃の地鳴り》のサーチを可能にしているデッキさえありました。
個人的にこの発想は、公式の記事でも言われていた「スワンアサルトは他の勝ち手段があれば・・・」という条件を満たしているためかなり好みです。《包囲の搭、ドラン》といい《永久モズ》といい、まったくズアーデッキの懐の広さには感心させられますね。
実際赤単とプレイテストをしている方ならご存知かと思いますが、意外(?)なことにスワンアサルトは赤単に大して思いのほか分のいい戦いが可能なデッキです。単純にアタッカーとしての白鳥を火力で落とせないのはもちろん、コンボ要素である白鳥も《突撃の地鳴り》も赤単では触ることができません。それゆえ、スワン側に取っては基本的にコンボを全く妨害されることなく決めることが可能になります。
ただ、当然スワンに適宜火力を打ち込むことで手札を増強できるため、完全に有利とは言えないのですが・・・。赤単が《雪崩し》を用いているのは、スワン対決になったときに一気に火力を引いて最後まで削りきるため、という側面もあるのかもしれませんね。ちなみに《穿刺破》を用いてもスワンはそもそもダメージをドローに置換してしまうため、除去することは不可能です。
・ヒバリ
フェアリーと同じくらい「シャドームーア以降得るものがない」と言われているヒバリ。そんなデッキが、なんとデンバーで活躍した《ルーンの光輪》を投入し、結果を残しました。
まずは《神の怒り》を打っても安心できない《復讐の亜神》、そして天敵フェアリーの《霧縛りの徒党》。この苦手を克服するため、サイドもしくはメインからこのエンチャントが投入されることでヒバリはほんの少し進化を遂げました。もはや《ルーンの光輪》はカスレアではない!
・エルフ、フェアリー
エルフは大量に勝っているわけではありませんが、イギリスで1人TOP8に入っています。そこで特徴的なのがまず《眼腐りの終焉/Eyeblight’s Ending》。久しぶりに使われるこの除去、赤単のクリーチャーが、赤単のくせに黒除去耐性が高すぎる(要は抉り出し、亜神)ために採用されたようです。あとはメインから4積みの《残忍なレッドキャップ》も相当光って見えますね。当然メイガス対策でしょう。
フェアリーも同様に1人だけです。これも構成を努力したようで、メインから大量の単体除去に《霊魂放逐》、サイドからの《瞬間凍結》、と赤の多い環境を潜り抜けるべく苦心の跡が見られます。
○総括
「単色ステロイド」こと赤単をTier1に据えた新環境は半月の課程を経て、この数年で最強の火力陣を豊富にベンチに据えた赤単が環境に合わせて火力を取捨選択できる柔軟さを見せ、また環境の最も多い除去が火力である、という点を利用した白鳥デッキの台頭という流れを見せました。さらに新たに発掘された《ルーンの光輪》という白の切り札も現れ、まだ環境の行き着く先は簡単に見えそうもありません。
いまの環境はどちらかというと上位陣のデッキ自体は変わらず、それぞれが積んでいる「対応するカード」を選ぶタイミングのようです。つまり、除去やカウンター、ちょっと珍しいところで《ルーンの光輪》など。その中で、環境的に強いという意図で持ち込まれたスワンデッキ各種は環境に一石を投じていると言えるでしょう。
赤単がさらなる成長を遂げるのか、白鳥が単なるマグレではなく、本気で環境を支配するのか。それとも不遇の白がいよいよ部族環境をコントロールし始めるのか。マーフォークに未来はあるのか。あと一ヶ月、まだまだ楽しめそうです。
前述のように赤単が猛威を振るい始めたことが認識された少し後、コロラド州デンバーにおいてブロック構築のグランプリが行われました。そう、いきなり「+α」の部分です。
そこで優勝を果たし、さらに新たなデックタイプとして名を馳せたのが白入り「Justice」クイックン・トーストでした。
これはイーブンタイドで登場し、微妙に低額レアな臭いを醸していた《正義の執政官》をフィニッシャーに据えたクイックン・トーストの亜種です。ですが、ここで注目すべきは《正義の執政官》ではなく、このデックにメインから採用されていたあるエンチャントでした。
《ルーンの光輪/Runed Halo》。
そう、この微妙に新しい発想で作られた感じのエンチャント。今まではただの面白レア扱いですが、ついに構築で日の目を見るときが来たのです。もともと《糾弾》の使えないブロック構築環境で《復讐の亜神》を何とかする、という発想で選ばれたカードですが、いざ運用すると《霧縛りの徒党》をプレイされたら相手のマナが勝手に縛られたり、《妖精の女王、ウーナ》に殴られることもなければ能力でライブラリーを削られることもない、というフェアリー相手にも通用する副次的効果も生み出したのです。
○オランダ、イギリス
さて、話は戻って今度は英・蘭の国別選手権。
英米仏のメタを受け、さらにデンバーの結果を得て生まれた上位陣のデッキとは・・・。
・赤単
やはり当然のように残っているこのデッキ。しかし、前半の英米仏とは明らかに違う点がありました。山が全て雪に覆われています。すなわち・・・《雪崩し/Skred》。
もともと《ショック》があったスペースに完全コンパチで投入されているこのカード。忘れたころに環境に帰ってきます。ショックは本体に打つことはほとんど無く、あったとしても貢献度が薄い、ということから除去性能だけを見て《雪崩し》になったのでしょうか。
まあ、ショックでも十分除去はできますし、本体に2点でも入るのと全く入らないのには大きな違いがあるのでは・・・と思ったりもするのですが、どの赤単を見てもことごとく《雪崩し》。同系の《抉り出し》と《亜神》に触れるのが《炎の投げ槍》だけ、というのはやはり辛いんでしょうかね。あとは《霧縛りの徒党》も手札に1枚山を温存しておくだけで、相手にターンを返すことなく落とせるとか。
・スワン
既にTOP8レシピを確認された方は驚いているかもしれません。
白鳥、白鳥。大量の《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》の姿がそこにはありました。
《突撃の地鳴り/Seismic Assault》を用いた典型的なスワン・アサルトはもちろん、青赤のカウンターバーンで単純にフィニッシャーとして使用しているデッキまで。中には《結界師ズアー/Zur the Enchanter》デッキにスワンアサルトのパーツを投入し、ズアーで《突撃の地鳴り》のサーチを可能にしているデッキさえありました。
個人的にこの発想は、公式の記事でも言われていた「スワンアサルトは他の勝ち手段があれば・・・」という条件を満たしているためかなり好みです。《包囲の搭、ドラン》といい《永久モズ》といい、まったくズアーデッキの懐の広さには感心させられますね。
実際赤単とプレイテストをしている方ならご存知かと思いますが、意外(?)なことにスワンアサルトは赤単に大して思いのほか分のいい戦いが可能なデッキです。単純にアタッカーとしての白鳥を火力で落とせないのはもちろん、コンボ要素である白鳥も《突撃の地鳴り》も赤単では触ることができません。それゆえ、スワン側に取っては基本的にコンボを全く妨害されることなく決めることが可能になります。
ただ、当然スワンに適宜火力を打ち込むことで手札を増強できるため、完全に有利とは言えないのですが・・・。赤単が《雪崩し》を用いているのは、スワン対決になったときに一気に火力を引いて最後まで削りきるため、という側面もあるのかもしれませんね。ちなみに《穿刺破》を用いてもスワンはそもそもダメージをドローに置換してしまうため、除去することは不可能です。
・ヒバリ
フェアリーと同じくらい「シャドームーア以降得るものがない」と言われているヒバリ。そんなデッキが、なんとデンバーで活躍した《ルーンの光輪》を投入し、結果を残しました。
まずは《神の怒り》を打っても安心できない《復讐の亜神》、そして天敵フェアリーの《霧縛りの徒党》。この苦手を克服するため、サイドもしくはメインからこのエンチャントが投入されることでヒバリはほんの少し進化を遂げました。もはや《ルーンの光輪》はカスレアではない!
・エルフ、フェアリー
エルフは大量に勝っているわけではありませんが、イギリスで1人TOP8に入っています。そこで特徴的なのがまず《眼腐りの終焉/Eyeblight’s Ending》。久しぶりに使われるこの除去、赤単のクリーチャーが、赤単のくせに黒除去耐性が高すぎる(要は抉り出し、亜神)ために採用されたようです。あとはメインから4積みの《残忍なレッドキャップ》も相当光って見えますね。当然メイガス対策でしょう。
フェアリーも同様に1人だけです。これも構成を努力したようで、メインから大量の単体除去に《霊魂放逐》、サイドからの《瞬間凍結》、と赤の多い環境を潜り抜けるべく苦心の跡が見られます。
○総括
「単色ステロイド」こと赤単をTier1に据えた新環境は半月の課程を経て、この数年で最強の火力陣を豊富にベンチに据えた赤単が環境に合わせて火力を取捨選択できる柔軟さを見せ、また環境の最も多い除去が火力である、という点を利用した白鳥デッキの台頭という流れを見せました。さらに新たに発掘された《ルーンの光輪》という白の切り札も現れ、まだ環境の行き着く先は簡単に見えそうもありません。
いまの環境はどちらかというと上位陣のデッキ自体は変わらず、それぞれが積んでいる「対応するカード」を選ぶタイミングのようです。つまり、除去やカウンター、ちょっと珍しいところで《ルーンの光輪》など。その中で、環境的に強いという意図で持ち込まれたスワンデッキ各種は環境に一石を投じていると言えるでしょう。
赤単がさらなる成長を遂げるのか、白鳥が単なるマグレではなく、本気で環境を支配するのか。それとも不遇の白がいよいよ部族環境をコントロールし始めるのか。マーフォークに未来はあるのか。あと一ヶ月、まだまだ楽しめそうです。
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