前回の日記にお二方からコメントを頂いて、そこでふらっどさんから(もしかしたら切望する者さんも)薦められた「基本地形多めで境界石と白蘭積んだボーダーポストヒバリ」。
すでに何箇所かの大会で結果を出しており、この形で運用している人も全国的にはかなり増えているのではないかと思うのですが、コメント欄にもちょろっと書いた通り僕自身はこの構成があまり好きではありません。
ふらっどさんにコメント欄で意見を返そうと思ったのですが、米欄に書くには相当長すぎる内容になったし、せっかく旬なネタなのでこれについて記事を1本書いてみることにしました。

参考デッキは以下の2つ。
第196回PWC5位
http://d.hatena.ne.jp/Strike/20090510
2009年日本選手権中国地区予選3位
http://29720.diarynote.jp/200905192037557950/

また、青白ヒバリながら境界石も白蘭も採用していない形として、手前味噌ながら自分が前回のゲートウェイで用いたものを参考にしてください。(http://police.diarynote.jp/200905180040527741/)

まずは結果を残した2つのデッキについて比較研究してみましょう。
基本クリーチャーは種類、枚数ともにほぼ同じ。具体的には《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》、《熟考漂い/Mulldrifter》、《誘惑蒔き/Sower of Temptation》、《目覚ましヒバリ/Reveillark》がほぼ4枚ずつ、《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage》が2枚。
除去構成もだいたい同じで《流刑への道/Path to Exile》4枚にラスゴ系が4枚。後者はPtEが3枚ですが、使用者本人がblog(http://82986.diarynote.jp/200905182112111616/)で4枚で良かったと述べていますので、4枚が適正であるとしてカウントします。
色マナの供給源もほぼ同じ。平地6に島5、ダメラン4にフィルター4、そして 4枚の《原霧の境界石/Fieldmist Borderpost》と3~4枚の《白蘭の騎士/Knight of the White Orchid》。ただし、前者はそれに加えて《変わり谷/Mutavault》が1枚、後者は《精神石/Mind Stone》が4枚と無色マナソースの枚数に差が出ています。
他の部分は《謎めいた命令/Cryptic Command》、《静月の騎兵/Stillmoon Cavalier》、《妖精の女王、ウーナ/Oona, Queen of the Fae》、《翻弄する魔道士/Meddling Mage》の採用の有無で差が出ているようです。

回したことのある人ならばすぐ判るのですがこの2つのデッキは似て非なるものであって、前者はマナベースをあくまで安定性向上のために構築しているのに対し、後者はデッキの半分以上のカードがマナベースになっており、それを有効活用するために《妖精の女王、ウーナ》というビッグアクションが用意されているのです。
デッキの半分がマナソースであるという点の評価は後回しにするにせよ、線の細い青白ヒバリにおけるウーナの採用は目を見張るものがあり、この点は単純に模倣したいと思わせてくれます。
ただ、今回はヒバリに境界石と白蘭を採用するかどうかが着眼点であり、それ以外についてはあまり深く追求はしないでおこうと思います。
まず、このデッキに《白蘭の騎士》+《境界石》を入れることで発生するメリットから考えていきましょう。

メリットその1:後手3ターン目に4マナ出せる(注:アヴィさんに指摘を頂いて本文を大幅に修正しました。)
今まで《白蘭の騎士》は後手3ターン目で相手の土地が3枚のときにメインフェイズで土地を置く前にプレイし、平地をサーチした上で土地を出す。そして次のターン(後手4ターン目)には5マナ出てますよ、というのが最も「速い」マナブーストでした。
それが、このデッキでは後手1ターン目に土地を戻して《境界石》をプレイすることにより、後手2ターン目にして相手土地2枚、こちら土地1枚(なのに2マナ出る)という状況を構築することが可能になったのです。
それはつまり後手3ターン目に4マナ並ぶということであり、普段なら《熟考漂い》を想起で済ませていたターン(しかも、それが初動だったりする)に誘惑蒔きをプレイしたり、PtEのマナを立たせて熟考想起ができたりします。要は《精神石》と同じ働きができる(しかも色マナが出る)というわけですね。

メリットその2:初手キープ基準が易しくなる
もちろん後手2ターン目に《境界石》から繋げるのが一番強いのですが、そうでなくても先手2ターン目や、(無理に平地をサーチする必要がないハンドのときは)土地2枚から後手で2/2先制攻撃としてプレイすることもできます。
すると、相手が《運命の大立者》スタートしてきたときも(こちら先手なら)1ターン凌ぐことができますし、《台所の嫌がらせ屋》も怖くありません。《メドウグレインの騎士》も睨みあいに持ち込めますね。
逆にフェアリー相手なんかだと苦花トークンが2~3個並んでても平気な顔してアタックに行けますし、そもそも相手が事故っている場合は序盤からダメージを稼ぐことができます。という感じで、相手のデッキによってはある程度の土地+白蘭+4マナ以上のカード複数、という形でもキープが可能になりそうです。

メリットその3:《呪詛術士/Anathemancer》に強い
これは直接的に対策するわけではなく副次的な効果なのですが、《境界石》が2色タップインランドの役割を果たしているのでその分特殊地形が減る計算になり、基本地形も多めなので構造的に《呪詛術士》のダメージを少なめの方向へ回避することができます。
・・・こんなところでしょうか。それではデメリット・・・というか、「それほど強くないんじゃない?」と思う理由を挙げていきましょう。

デメリット1: マナベースとして数えるには不安定
メリット1で挙げた状況は《精神石》の上位互換なので強いには強いのですが、2ターン目までに平地、境界石、白蘭が全て揃った上で4マナ域のアクションを引いていなければ十分強いとは言えないので実は相当縛りが厳しいのです。
例えば2ターンは土地2枚でエンドし、3ターン目にようやく白蘭でランドサーチ、となった場合は4ターン目に5マナ出るのですが(つまりいつも通りの白蘭です)、これはそんなに強くありません。3ターン目ならキッチン出すなり熟考想起するなりやることがありますし、2ターン目に《精神石》を置いているなら誘惑蒔きやラスゴ、エレンドラをキレプレイなどもできます。環境的に強いのはビートダウンなので、4マナのアクションが3ターン目に取れることの方が重要なんですよね。
さらに、これは個人的にとても重要だと思っているのですが、序盤~中盤までに境界石を複数プレイしてしまうと《大渦の脈動》でゲームが終了するというのがとても怖いです。別に1枚しかプレイしない場合でも同様で、要は本来まともな打ち所が《誘惑蒔き》くらいしかなくて腐りがちなパルスに、コントロール相手の土地破壊という致命的な役割を与えてしまうのが許せないのです。
《精神石》はただのブーストなので破壊されても展開ペースが通常通りに戻るだけですが、《境界石》はテンポ的に土地と同じ扱いなので(しかも色マナをこれに依存して計算しているので)序盤から破壊されると洒落になりません。

さらに、ちょっと脇道に逸れますが、この構成だと境界石を安定してプレイできるようにするためにこれ以上基本地形を減らすことはできません。つまり、ミシュラランドの投入が否定されてしまいます。
しかし、白黒トークンのアジャニやエルフのガラクなど、対処しなければいけないPWはかなり存在します。これらのPWを、中盤以降にラスゴ→余ったマナからの変わり谷で落とすという動きができなくなるのは地味にきついと思います。ガラクは特に厳しいですし。そうでなくてもリセット多めのデッキでしかも2色なのですから、ミシュラランドを全く採用できないというのはその強みを大いに殺いでしまっていると思うのですがどうでしょうか?
それと、《呪詛術士》の採用率がそこまで高くないことも挙げられます。赤黒ブライトニングがまったく勝てない環境ですし、サイドから同系対策に積んでいたというトーストもいまや絶滅しています。

デメリット2:メタ的に白蘭本体が弱い
ここでいうメタとはもちろん緑黒エルフと白黒トークンです。まず、緑黒エルフで序盤最も恐ろしいのが《レンの地の克服者》と《朽ちゆくヒル》ですが、この2体に対して白蘭は全く無力です。中盤以降もガラクからの3/3ビーストや《樹上の村》、そして最近急増している《傲慢な完全者》がいれば《護民官の道探し》すら止めることができません。要は止まるクリーチャーが全くと言っていいほどいないのです。もちろんこちらから殴っても意味がありません。
つまり、デメリット1と併せて考えると、本来勝たなければいけないはずのエルフに対する不要牌や弱点が無駄に増えていると結論することができると思います。ただでさえサイドから雲打ちや徒党など強烈なアンチカードが入ってしまうのに、これはとても憂慮すべきことだと思います。
また、白黒トークンは御存知のとおり大抵飛んでいるのでメドウグレインと睨みあうくらいしかできません。そもそもこの2つのデッキ対してには可及的速やかにラスゴか誘惑蒔きを叩きつける必要があるので白蘭とか出してる場合じゃないです。
ちなみに白蘭本体はヒバリで釣ってくることができますが、そこまでマナが伸びていれば平地サーチする必要もないし土地数的にできるかどうかも微妙だし、そもそも釣りたいクリーチャーは他にも山のように墓地に眠っています。
クリーチャーとしての活躍がほとんど期待できないのですからマナブースト機能が相当安定して強くなければ採用したくないのですが、前述の通り5枚目以降の精神石としての役割(を果たすかどうかも微妙)がせいぜいです。

デメリット3:十分な空きスロットが無い
リストを見てもらえば判りますが、前者は《精神石》、後者は《謎めいた命令》が入っていません。後者はメインからの不要牌である《翻弄する魔道士》を外せば良いように見えますが、製作者本人も言うようにPtEと白蘭が1枚ずつ増加し、誘惑蒔きも4枚入れない理由がないので余りスペースは1枚になります。
境界石は土地と差し替えになるので気にならないのですが、白蘭が入るスペースがありません。そして、今まで見てきた理由により、白蘭は(《精神石》を抜くのは論外として)青命令より優先する価値があるかというと大いに疑問を感じます。

もちろん青命令自体もこのデッキではそこまで強くありません。いえ、当然ながら強いのは強いのですが、フェアリーやマーフォークのようなクロックパーミが使うそれとは比べ物にならないくらい弱いのです。《放逐/Dismiss》ってこの手のデッキには本来必要ないカードですからね。
なのでこのスペースに2~4枚ほど、初手のキープ基準に含むことのできるような、序盤を凌ぎつつデッキにも噛みあう「何か」を投入するのが現環境の最適解ではないのかな・・・と思います。
しかし白蘭なしのタイプでも2マナ域の精神石に3マナ域のキッチン、熟考想起、精神石置いてるならラスゴや誘惑蒔きと様々なアクションは用意されているわけで、デメリット2で挙げたように序盤の攻防に役立たない、ということは「初手のキープ基準にするのは危険である」ということにはならないでしょうか。
もちろんメリット1の状況(つまり精神石と同じ働き)ならばキープ基準にして良いのですが、それ以外の場合は(後手3ターン目を除き)ただの2/2先制攻撃を場に出すだけになります。それは少なくともコントロールがやる仕事ではありません。
だったら致命的なカードにメインから柔軟に対応できる青命令をメインから取っておいた方がよほど安定するのではないでしょうか?

長くなりましたが、こんなところでしょうか。
正直「白蘭と境界石のヒバリは好みじゃない」という結論ありきで書き上げた文章なのでところどころ強引な理論展開があるかもしれません。
しかし、それでも青白のウィザード系デッキを長期間使い続け、そしてその発展形としてオリジナルでヒバリを組み上げた人間の言うことなのでそこまで的外れではないと思うのです。
もちろん調整を重ねてボーダーポストタイプのヒバリが強い、ということが理解できれば大会にもそちらを持ち込みますが、今のところはあんまり強さが判らないなぁといった感じですね。

というわけで、「この文章のこの理論はおかしい」とか「~という側面を忘れているだろう」というような指摘があればぜひコメントをお願いします。

コメント

アヴィ
2009年5月22日8:13

メリットその1に関してですが、「後手3ターン目に4マナ出る」状況は理解できるのですが5マナ出る状況は無いのでは?<1t境界石(1マナ)2t平地出し百蘭で平地サーチ(3マナ)3tセットランド(4マナ)>
まぁこれでも蒔きやエレンドラが1ターン早まったりPtEのマナ浮かせて熟考想起出来たりで強そうですね。

nophoto
伊達
2009年5月22日9:15

ヒバリデッキに関する考察、非常に参考になりました。
ただ気になったのは、境界石を用いない場合のkeep基準になるカードの代案が出てない点です。
多くのヒバリユーザーがその点を悩んだ末の境界石と白欄の採用ではないかと思うのです・・・
デッキの構造上、砕けた野望系統のカウンターは先手時以外機能するとは思えないので、能動的なカードがその「何か」に当てはまると思うのですが。

ポリスさんは何を採用しますか?

ポリス
2009年5月22日12:08

>アヴィさん
普通に間違えました。何故か2ターン目開始時点で境界石+土地が出てることになっていたようですw自分で書いてて「2マナブーストしてるっておかしくね?まあいいや」と適当に流したのが良くなかった。

>伊達さん
非常に正しい指摘で、まさにそこがこの議論の主眼になります。
もちろん2T目精神石か3T目キッチンと熟考想起スタートは十分考えられるのですが、それだけでは足りない、ということですよね。
書き方が悪かったのですが、自分としてはこのようにデメリットの多い構造にするくらいならば別に上記の3種でいいのでは?と考えています(今のところは)。
もちろん「何か」が見つかればいいのですが、まだ自分でも見つけられていません。

いくつか本文を修整しておきます。

nophoto
鳥助
2009年5月22日15:24

>呪詛術士
海外の国別予選の結果の上位を見ると、赤黒は白黒に次ぐ2番手勢力に居るので無視は出来ないかと。
逆にエルフはほとんど居なかったりするんですね。今後のメタがどうなるかは解りませんが。

nophoto
切望する者(だい○く)
2009年5月22日21:45

駄文なのは承知ですが、自分も境界石・白蘭には反対なので繰り返しになるかもしれませんが述べさせていただきますね☆自分の意図が伝わらなかったらすみません境界石:先手囲いやパルスによって落とされるとそのまま事故ってしまう気がしてならない。精神石と違い純粋に土地としてカウントされているので、これらの妨害は相当厳しいはずです(ランデス受けているようなものですから)。境界石単体ではタップインランドが増えているだけで、肝心なときに展開できない原因になりえます。せっかく2色で組んでいるのにわざわざタップインしてまで隙を作るのは賛同できません。4マナ5マナ圏は強力なアクションを行えるのですからね。白蘭:こいつを入れるスペースに他の何かを入れたほうがいいのでは、という筆者の意見には賛同です。土地もって来た後は序盤ですらチャンプブロックにしかならず、終盤のカードパワーもありません。またヒバリで釣るほどの価値もありません。それなら他の有用なカードに差し替えるべきでしょう。エルフは純粋にカードパワー高いものを選りすぐってる中、境界石だの白蘭だの弱みになるパーツは控えていくべきだと考えます。明日大会に出るのですが、現在谷を持っていない都合上トリコで出るつもりですので参考にはならないかもしれませんが結果報告は自DNにて行いますのでよければご覧になってください。

nophoto
切望する者(だい○く)
2009年5月22日21:46

↑↑
メモ帳で書いたら一切改行されてないとか・・・本当に駄文になってしまい申し訳ないです↓

nophoto
ふらっど
2009年5月23日3:34

伊達さんがおっしゃってる事が全てですかね
ヒバリを組むなら消去法でこの構成になると思えば

あと、誰も触れてませんけどボーダーポストはただのタップインランドではなくて3T目素だしによるマナ加速も偉いですよ

自分が調整して組んだリスト晒しときます
もはやヒバリデッキでは無いんで青白ビッグマナだと思ってます

CREATURE:24
4 白蘭の騎士
4 台所の嫌がらせ屋
2 エレンドラ谷
4 誘惑蒔き
4 熟考漂い
4 目覚ましヒバリ
2 妖精の女王、ウーナ

SPELL:17
2 ジェイス・ベレレン
3 流刑への道
2 神の怒り
2 軍部政変
4 精神石
4 原霧の境界石

LAND:19
4 秘境の門
3 アダーカー荒原
6 島 /6 平地

ーーー

大々エルフに7:3前後、白黒に五分
サイド後は前者に6:4〜5:5(相手のサイドのパペットや雲打ち次第)、白黒に6:4くらいです
あ、サイド後は脳内なんで悪しからず

エルフ多い関西ならこの構成だとかなり良い感じに戦えるんじゃないでしょうか

毎度毎度長文で申し訳ないw

ポリス
2009年5月24日1:58

>鳥助さん
確かに外人は《呪詛術士》大好きみたいですね。
とりあえずエルフ天国の大阪で勝ちにいくためのデッキなので今のところはこのままでいきますが。

>切望する者さん
パルスによる妨害は書きましたが、ハンデスについては言及してませんでしたね。あとはカウンターされることも有りうる、という感じでしょうか。白蘭の弱さについても書かれている通りです。

>ふらっどさん
消去法ならば白蘭と境界石も割と消去される側だと思うのですがどうでしょうか。
少なくともヒバリというデッキ自体がナチュラルに必要とするパーツではないので、何か強い意志が無ければ投入されないはずです。消去法の結果残ったパーツ、という主張には違和感を覚えます。
あとラスゴをメインに4積んでいないレシピを数多く見るのですが、わざわざ重いスペルや弱いスペルに差し替えてまで減らす意味が見出せないので自分は4枚積んでいます。

nophoto
広島の遅刻魔
2009年5月24日16:09

百蘭と境界石が消去法で消される側、というのはちょっと私には分からないですね。。。それならば、2マナ粋はどうするんですか?
精神石よりかは、さすがに百蘭の方が強いですよ。流刑とのシナジーを軽く見すぎているのではないでしょうか?


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