【スタンダード考察】青白イリュージョンは本当に強いのか?
2011年11月17日 戦略記事・読み物 コメント (6)
・デッキ紹介
最近MOのDEやPEで必ずと言っていいほど複数上位入賞している青白イリュージョン。GP広島の時にはまだ存在していなかったアーキタイプで、ここ1~2週間で突如爆発的な流行を見せています。
国内では少しずつですが使われ始めているようで、おそらく今週末から本格的に使用人数が増え始めるのではないでしょうか。
代表的なリストはこんな感じ。
基本的に勝っているのはほぼ同じリストで、メイン1、サイド3枚挿しの《縫い合わせのドレイク》までほぼ全員同じです。
サイドの中身が人によって少しずつ違いますが、メインはほとんど共通しています。
動きは見た目通りで、最序盤に1~2マナの生物で2点以上のクロックを素早く用意し、その後は軽量スペルとマナリークで相手を妨害するという動きになります。一応《四肢切断/Dismember》が申し訳程度に投入されていますが、実際はバウンスに頼る機会が多いです。ファイレクシア・マナを多用しており、別名スーサイドブルーとも呼ばれているとかいないとか。
ロード→幻影の像、の順にプレイできれば実質ロード8枚体制かのように振る舞えるため、いわゆる「ぶん回り」があるのもメリットでしょう。部族デッキならではですね。
白マナはメインサイド合わせても《ムーアランドの憑依地》と《忘却の輪》にしか使い道はありません。人によってはサイドに《機を見た援軍》を入れていることもあるようですが、生物が多い上に自分から殴るタイプのデッキなのでやや微妙ですね。リングも全員が全員取っているわけではなく、白マナは本当にムーアランドしか使わない、という構成も多いです。
・環境での立ち位置
このデッキはいわゆるクロック・パーミッションです。…と言いたいところですが、カウンターがマナリークしか無いのでクロックパーミッションと表現するのは無理がありますね。強いて分類するとすれば部族ビートダウンです。
脅威に関しては「出る前に終わらせる」という側面が強く、仮に着地してしまった場合はバウンスやdismemberで対処するようになっています。4マナ程度までの生物ならばバウンスで凌げば問題なく、タイタンやスフィンクスなどは死ぬ気でリークするなりダメージレースで押しこめということなのでしょう。スペルはリークでしか対処できませんが、全体除去はムーアランドでケアできるのであえて専用に対策は取っていないものと思われます。
その性質上、遅いデッキに対してはかなりの相性差を誇ります。特に青黒系のコントロール(太陽拳含む)や赤緑のケッシグ系ビッグマナには少なくともメインを落とすことはほぼ無いでしょう。サイド後も特に相性が激変することもないので、マッチ全体を有利に進められます。
逆に純粋なビートダウンとは速度面、アドバンテージ面などで細かく争うことになります。マナクリーチャーで先手後手が入れ替えられると困るので《はらわた撃ち》が採用されています。後手でも相手の初動を落としつつ自分は1マナ生物をプレイできる、という卑怯くさいスペルですね。
逆にアドバンテージ勝負になってしまうとほぼ勝ち目はありません。PWに対処できるカードもほぼ存在しませんし、回避能力を持つ生物がほとんどいないので盤面を固められてしまうとほぼ負けと言っていいでしょう。
また、特に不利なのが赤単です。ほぼ全てのスペルが確定除去として働いてしまい、《非実在の王》も2体並んだところで互いを強化してくれないので実質的に呪禁もあまり意味がありません。どうせ最初に狙うのはロードですからね。
さらに激しくペイライフをするため簡単に火力圏内に入ってしまい、ほぼ構造的に無理なレベルです。
最近はこの点を克服するためにメインから1、サイドに追加の《縫い合わせのドレイク》が投入されるようになったようです。3/4飛行はブロッカーとしてもアタッカーとしても強力なサイズで、火力1枚で落とされることもありません。まあそれでもガン不利なことには変わりません。前述したように構造上の理由から《機を見た援軍》を効果的に使えない場面が多く採用しづらいのが厳しいですね。
・「神束」との比較
国内でもGP広島前後に似たようなデッキが存在しました。いわゆる「神束」と呼ばれるタイプで、《秘密を掘り下げる者》にスポットを当てたクロックパーミッションです。
その後も使い続けている人は少数ながら存在しているようですが(なぜか自分の周囲はこのデッキを使っている人が異常に多いのですが)、一般的にはあまり知名度は高くないようです。
自分が使っているリストは大会レポへのリンクを張っているので、興味のある方はご覧ください(http://police.diarynote.jp/201111121118068325/)。
簡単に言うとこのデッキは「1マナの回避持ちとインスタント生物のみに限り、残りをほぼ全てカウンターで埋め尽くす」という形で、これはイリュージョンとは異なりまさに「クロックパーミッション」と呼ぶのがふさわしいですね。カウンター以外のスペルはバウンス、ガットショット、思案とイリュージョンと同じラインナップになっています。
それではこの2つの類似したデッキタイプを比較してみましょう。
1.虫男の変身する確率
こちらの《秘密を掘り下げる者》の変身確率は相当高く、ほぼ1/2の確率で変身することができます。1/3にも満たないイリュージョンとはかなり違いますね。この生物は変身する・しないの差が非常に大きいので、たとえ運が良ければ枚数が少なくても変身することはあるとは言え、やはり安定して変身できるデッキの方が魅力的に感じます。
2.ブン回りのパターン
神束は1T目に虫男→即変身からあとは延々とカウンターを構える、という動きが最大のドブンです。イリュージョンは熊、ロード、幻影と並べるとクロックがものすごいことになるので、リークかバウンスを一度挟むことができれば勝てることも少なくないですね。
どちらも遅いデッキには人権を与えないほどの動きをしますが、より安定感のあるのはイリュージョンですね。1体の生物への依存度がそこまで高くない上、ムーアランドがあるのでクロックの継続供給は比較的容易です。
3.安定性
この2つを比較するにあたり自分が最も大事だと思うのがここです。
まずはマナベース。
イリュージョンには《ムーアランドの憑依地》のためだけに白がタッチされています。それ自体には問題はありません。白マナが出る土地からは全て青マナが出ますからね。
しかしここで問題となるのはムーアランドそれ自体です。当然ここからは青マナは出ませんし、さらにこの土地は《氷河の城砦》のアンタップ条件に当然寄与しないため、「初手がミラン土地+ムーアランド、3枚目の引きこんだ土地が城砦」といった割とよくあるパターンでかなり苦しい動きを強いられることになります。
さらに悪いことにこのデッキの核となる《非実在の王》が青ダブルシンボルであるため、2ターン目までに憑依地をプレイせざるを得ない場合、本来目指す動きが実現できないことが多いのです(ロード以外にも、1ターン目に《秘密を掘り下げる者》→2ターン目に熊+思案をプレイしたい時など、2ターン合わせて青マナ3つをフルに使いたいことの方が多いデッキであることがこの弱点をさらに強調します)。
単体のカードパワーは低いので、マナをフルに使いきって動けなければ負けに直結することでしょう。あくまで中長期戦を見据えたムーアランドのせいで本来圧倒的有利であるはずの序盤の展開に支障が出るのは歓迎しがたいですね。
本来能力持ちの土地は「タップインするor色マナが出ない代わりに序盤は普通に展開に寄与して、後半はマナフラッドを回避する」という役割があるのですが、このデッキのムーアランドはその前半部分の仕事をほとんど満たさない、つまりキープ基準の土地枚数にカウントできないという大きなデメリットがあるのです。
続いて生物。
まず、見た目は多くの生物が入っているのですがキープ基準になるのは実際のところ虫男と熊しかいません。もちろん熊、王と揃って引いていれば心強いでしょう。しかし王を単体で引いてもただの2マナ2/2(それこそ「クマ」です)な上、前述の通りダブルシンボルなのでそもそもスムーズにプレイできるかどうかも定かではありません。王が2体並んでも何も起こらないのも辛いですね。一般的に部族ロードは互いに強化し合うので2マナならば十分にキープ基準になり得るのですが(《アトランティスの王》や《皺だらけの主》など)、イリュージョンは特殊なのです。せっかくキープ基準になった虫男もこの枚数ではずっと1/1のまま…という展開も珍しくないので、生物は多いですがキープ基準になるカードは実は神束より少ないのです。
さらに、《幻影の像》ががっつり4積みされていますがこれも悩ましい。幻影像は途中で引いてきたら嬉しいことが多いですが、初手に持っていてもゲームプランに組み込むことは困難です。せっかくのシングルシンボル2マナですがキープ基準にはなりません。相手がコントロールでしばらく生物出してこなくて、1T目に熊→結局しばらく経って像で熊コピー、って寂しくないですか?
あとは単純に回避能力が少ないという欠点もありますね。熊とロードが並んだところで相手にミラクルや接合者がいたらどうしようもないわけですし、フライヤーさえいれば除去しなくてもいいようなところに除去を撃たされることも珍しくありません。ムーアランドのトークンは確かに飛んでいますが、なら最初からカウンターを増やして《深夜の出没》を構えていた方が強いはずです。
というわけで最後にカウンター。
イリュージョンにはメインのカウンターはリーク4しかありません。これは白青人間ビートのような盤面で圧倒的な支配力や必殺のコンボ(トラフトorミラクル+天使の運命など)を持っているデッキならば「ここぞと言うところのタイムウォーク」として使えるわけですが、このデッキは通してはいけないカードが多すぎます。
少なくとも僕はこのリストではケッシグ系・コントロール・緑白の多い国内ではプレイしたくありません。ギタクシア、ドレイク、幻影像を削って最低でも《否認/Negate》は投入したいですね。
簡単に言えば、このデッキは「カウンター構えなくても叩きつけるだけで相手を圧倒できる」というタイプのデッキではないにもかかわらずあえてカウンターが切り詰められているように見えるのです。それが僕がこのデッキをどうにも気に入らない最大の理由ですね。もちろん瞬唱がいれば実質カウンター8枚体制と言えないこともないですが、それは先にマナリークを引いた時の話です。リークが引けていなければフラッシュバックも何もありません。
別の言い方をすれば、「クロックパーミの体裁で組まれているのも関わらず代替の効かないカードが妙に多い」とも表現できますね。唯一のロード、唯一のカウンター。噛み合わなければ即死亡とも言えるかな?
クロックパーミは単体のカードが弱い代わりに役割の似たカードを複数積むことで動きを安定させれるのが強みなので、そこが欠けてしまうと単なる「右手」デッキになりがちですよね。このスペル枚数で虫男を採用してる時点でもはや右手デッキ以外の何物でもない気はしますがw
そんなわけで気付けば比較というより青白イリュージョンへの文句ばかりになってしまいましたが、実際このデッキをあえて選択する意味ってあるのかな?とは思います。ハエ出してカウンター構えたいなら神束でいいし、生物ビートしたいならPWの強い緑白の方が強い。
MOでこれだけ流行っていて勝っているのでおそらく世界選手権でもURテンポとともに活躍するのでしょうが、個人的にはあんまり好きなデッキじゃないなぁという感想でした。スタンでもレガシーでもマーフォークを使い続けてきたクロックパーミッション好きとしては色々言いたいことがあるんです。
最近MOのDEやPEで必ずと言っていいほど複数上位入賞している青白イリュージョン。GP広島の時にはまだ存在していなかったアーキタイプで、ここ1~2週間で突如爆発的な流行を見せています。
国内では少しずつですが使われ始めているようで、おそらく今週末から本格的に使用人数が増え始めるのではないでしょうか。
代表的なリストはこんな感じ。
strong sad (4-0)
Standard Daily #3014308 on 11/16/2011
土地20
3《氷河の城砦/Glacial Fortress(M12)》
10《島/Island(M12)》
3《ムーアランドの憑依地/Moorland Haunt(ISD)》
4《金属海の沿岸/Seachrome Coast(SOM)》
クリーチャー21
4《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets(ISD)》
4《非実在の王/Lord of the Unreal(M12)》
4《幻影の像/Phantasmal Image(M12)》
4《幻影の熊/Phantasmal Bear(M12)》
4《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》
1《縫い合わせのドレイク/Stitched Drake(ISD)》
スペル19
2《四肢切断/Dismember(NPH)》
3《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe(NPH)》
3《はらわた撃ち/Gut Shot(NPH)》
4《マナ漏出/Mana Leak(STH)》
4《思案/Ponder(M12)》
3《蒸気の絡みつき/Vapor Snag(NPH)》
サイドボード
2《雲散霧消/Dissipate(MIR)》
2《瞬間凍結/Flashfreeze(M12)》
3《精神的つまづき/Mental Misstep(NPH)》
1《迫撃鞘/Mortarpod(MBS)》
1《否認/Negate(M12)》
3《忘却の輪/Oblivion Ring(ALA)》
3《縫い合わせのドレイク/Stitched Drake(ISD)》
基本的に勝っているのはほぼ同じリストで、メイン1、サイド3枚挿しの《縫い合わせのドレイク》までほぼ全員同じです。
サイドの中身が人によって少しずつ違いますが、メインはほとんど共通しています。
動きは見た目通りで、最序盤に1~2マナの生物で2点以上のクロックを素早く用意し、その後は軽量スペルとマナリークで相手を妨害するという動きになります。一応《四肢切断/Dismember》が申し訳程度に投入されていますが、実際はバウンスに頼る機会が多いです。ファイレクシア・マナを多用しており、別名スーサイドブルーとも呼ばれているとかいないとか。
ロード→幻影の像、の順にプレイできれば実質ロード8枚体制かのように振る舞えるため、いわゆる「ぶん回り」があるのもメリットでしょう。部族デッキならではですね。
白マナはメインサイド合わせても《ムーアランドの憑依地》と《忘却の輪》にしか使い道はありません。人によってはサイドに《機を見た援軍》を入れていることもあるようですが、生物が多い上に自分から殴るタイプのデッキなのでやや微妙ですね。リングも全員が全員取っているわけではなく、白マナは本当にムーアランドしか使わない、という構成も多いです。
・環境での立ち位置
このデッキはいわゆるクロック・パーミッションです。…と言いたいところですが、カウンターがマナリークしか無いのでクロックパーミッションと表現するのは無理がありますね。強いて分類するとすれば部族ビートダウンです。
脅威に関しては「出る前に終わらせる」という側面が強く、仮に着地してしまった場合はバウンスやdismemberで対処するようになっています。4マナ程度までの生物ならばバウンスで凌げば問題なく、タイタンやスフィンクスなどは死ぬ気でリークするなりダメージレースで押しこめということなのでしょう。スペルはリークでしか対処できませんが、全体除去はムーアランドでケアできるのであえて専用に対策は取っていないものと思われます。
その性質上、遅いデッキに対してはかなりの相性差を誇ります。特に青黒系のコントロール(太陽拳含む)や赤緑のケッシグ系ビッグマナには少なくともメインを落とすことはほぼ無いでしょう。サイド後も特に相性が激変することもないので、マッチ全体を有利に進められます。
逆に純粋なビートダウンとは速度面、アドバンテージ面などで細かく争うことになります。マナクリーチャーで先手後手が入れ替えられると困るので《はらわた撃ち》が採用されています。後手でも相手の初動を落としつつ自分は1マナ生物をプレイできる、という卑怯くさいスペルですね。
逆にアドバンテージ勝負になってしまうとほぼ勝ち目はありません。PWに対処できるカードもほぼ存在しませんし、回避能力を持つ生物がほとんどいないので盤面を固められてしまうとほぼ負けと言っていいでしょう。
また、特に不利なのが赤単です。ほぼ全てのスペルが確定除去として働いてしまい、《非実在の王》も2体並んだところで互いを強化してくれないので実質的に呪禁もあまり意味がありません。どうせ最初に狙うのはロードですからね。
さらに激しくペイライフをするため簡単に火力圏内に入ってしまい、ほぼ構造的に無理なレベルです。
最近はこの点を克服するためにメインから1、サイドに追加の《縫い合わせのドレイク》が投入されるようになったようです。3/4飛行はブロッカーとしてもアタッカーとしても強力なサイズで、火力1枚で落とされることもありません。まあそれでもガン不利なことには変わりません。前述したように構造上の理由から《機を見た援軍》を効果的に使えない場面が多く採用しづらいのが厳しいですね。
・「神束」との比較
国内でもGP広島前後に似たようなデッキが存在しました。いわゆる「神束」と呼ばれるタイプで、《秘密を掘り下げる者》にスポットを当てたクロックパーミッションです。
その後も使い続けている人は少数ながら存在しているようですが(なぜか自分の周囲はこのデッキを使っている人が異常に多いのですが)、一般的にはあまり知名度は高くないようです。
自分が使っているリストは大会レポへのリンクを張っているので、興味のある方はご覧ください(http://police.diarynote.jp/201111121118068325/)。
簡単に言うとこのデッキは「1マナの回避持ちとインスタント生物のみに限り、残りをほぼ全てカウンターで埋め尽くす」という形で、これはイリュージョンとは異なりまさに「クロックパーミッション」と呼ぶのがふさわしいですね。カウンター以外のスペルはバウンス、ガットショット、思案とイリュージョンと同じラインナップになっています。
それではこの2つの類似したデッキタイプを比較してみましょう。
1.虫男の変身する確率
こちらの《秘密を掘り下げる者》の変身確率は相当高く、ほぼ1/2の確率で変身することができます。1/3にも満たないイリュージョンとはかなり違いますね。この生物は変身する・しないの差が非常に大きいので、たとえ運が良ければ枚数が少なくても変身することはあるとは言え、やはり安定して変身できるデッキの方が魅力的に感じます。
2.ブン回りのパターン
神束は1T目に虫男→即変身からあとは延々とカウンターを構える、という動きが最大のドブンです。イリュージョンは熊、ロード、幻影と並べるとクロックがものすごいことになるので、リークかバウンスを一度挟むことができれば勝てることも少なくないですね。
どちらも遅いデッキには人権を与えないほどの動きをしますが、より安定感のあるのはイリュージョンですね。1体の生物への依存度がそこまで高くない上、ムーアランドがあるのでクロックの継続供給は比較的容易です。
3.安定性
この2つを比較するにあたり自分が最も大事だと思うのがここです。
まずはマナベース。
イリュージョンには《ムーアランドの憑依地》のためだけに白がタッチされています。それ自体には問題はありません。白マナが出る土地からは全て青マナが出ますからね。
しかしここで問題となるのはムーアランドそれ自体です。当然ここからは青マナは出ませんし、さらにこの土地は《氷河の城砦》のアンタップ条件に当然寄与しないため、「初手がミラン土地+ムーアランド、3枚目の引きこんだ土地が城砦」といった割とよくあるパターンでかなり苦しい動きを強いられることになります。
さらに悪いことにこのデッキの核となる《非実在の王》が青ダブルシンボルであるため、2ターン目までに憑依地をプレイせざるを得ない場合、本来目指す動きが実現できないことが多いのです(ロード以外にも、1ターン目に《秘密を掘り下げる者》→2ターン目に熊+思案をプレイしたい時など、2ターン合わせて青マナ3つをフルに使いたいことの方が多いデッキであることがこの弱点をさらに強調します)。
単体のカードパワーは低いので、マナをフルに使いきって動けなければ負けに直結することでしょう。あくまで中長期戦を見据えたムーアランドのせいで本来圧倒的有利であるはずの序盤の展開に支障が出るのは歓迎しがたいですね。
本来能力持ちの土地は「タップインするor色マナが出ない代わりに序盤は普通に展開に寄与して、後半はマナフラッドを回避する」という役割があるのですが、このデッキのムーアランドはその前半部分の仕事をほとんど満たさない、つまりキープ基準の土地枚数にカウントできないという大きなデメリットがあるのです。
続いて生物。
まず、見た目は多くの生物が入っているのですがキープ基準になるのは実際のところ虫男と熊しかいません。もちろん熊、王と揃って引いていれば心強いでしょう。しかし王を単体で引いてもただの2マナ2/2(それこそ「クマ」です)な上、前述の通りダブルシンボルなのでそもそもスムーズにプレイできるかどうかも定かではありません。王が2体並んでも何も起こらないのも辛いですね。一般的に部族ロードは互いに強化し合うので2マナならば十分にキープ基準になり得るのですが(《アトランティスの王》や《皺だらけの主》など)、イリュージョンは特殊なのです。せっかくキープ基準になった虫男もこの枚数ではずっと1/1のまま…という展開も珍しくないので、生物は多いですがキープ基準になるカードは実は神束より少ないのです。
さらに、《幻影の像》ががっつり4積みされていますがこれも悩ましい。幻影像は途中で引いてきたら嬉しいことが多いですが、初手に持っていてもゲームプランに組み込むことは困難です。せっかくのシングルシンボル2マナですがキープ基準にはなりません。相手がコントロールでしばらく生物出してこなくて、1T目に熊→結局しばらく経って像で熊コピー、って寂しくないですか?
あとは単純に回避能力が少ないという欠点もありますね。熊とロードが並んだところで相手にミラクルや接合者がいたらどうしようもないわけですし、フライヤーさえいれば除去しなくてもいいようなところに除去を撃たされることも珍しくありません。ムーアランドのトークンは確かに飛んでいますが、なら最初からカウンターを増やして《深夜の出没》を構えていた方が強いはずです。
というわけで最後にカウンター。
イリュージョンにはメインのカウンターはリーク4しかありません。これは白青人間ビートのような盤面で圧倒的な支配力や必殺のコンボ(トラフトorミラクル+天使の運命など)を持っているデッキならば「ここぞと言うところのタイムウォーク」として使えるわけですが、このデッキは通してはいけないカードが多すぎます。
少なくとも僕はこのリストではケッシグ系・コントロール・緑白の多い国内ではプレイしたくありません。ギタクシア、ドレイク、幻影像を削って最低でも《否認/Negate》は投入したいですね。
簡単に言えば、このデッキは「カウンター構えなくても叩きつけるだけで相手を圧倒できる」というタイプのデッキではないにもかかわらずあえてカウンターが切り詰められているように見えるのです。それが僕がこのデッキをどうにも気に入らない最大の理由ですね。もちろん瞬唱がいれば実質カウンター8枚体制と言えないこともないですが、それは先にマナリークを引いた時の話です。リークが引けていなければフラッシュバックも何もありません。
別の言い方をすれば、「クロックパーミの体裁で組まれているのも関わらず代替の効かないカードが妙に多い」とも表現できますね。唯一のロード、唯一のカウンター。噛み合わなければ即死亡とも言えるかな?
クロックパーミは単体のカードが弱い代わりに役割の似たカードを複数積むことで動きを安定させれるのが強みなので、そこが欠けてしまうと単なる「右手」デッキになりがちですよね。このスペル枚数で虫男を採用してる時点でもはや右手デッキ以外の何物でもない気はしますがw
そんなわけで気付けば比較というより青白イリュージョンへの文句ばかりになってしまいましたが、実際このデッキをあえて選択する意味ってあるのかな?とは思います。ハエ出してカウンター構えたいなら神束でいいし、生物ビートしたいならPWの強い緑白の方が強い。
MOでこれだけ流行っていて勝っているのでおそらく世界選手権でもURテンポとともに活躍するのでしょうが、個人的にはあんまり好きなデッキじゃないなぁという感想でした。スタンでもレガシーでもマーフォークを使い続けてきたクロックパーミッション好きとしては色々言いたいことがあるんです。
コメント
MOで何度もこのタイプに当たっていますが、私もあまり強いと思ったことがありません。
私自身、M12が出たときに青単のイリュージョンクロックパーミを組んでいましたが、そのときは《呪文貫き》《剥奪》があってこそ戦えるデッキだと思っていました。
イリュージョンは回避能力がほぼないので、おっしゃる通り「通してはいけない」カードが多すぎますよね。並べてなんぼなデッキなのに全体除去への回答がリーク4枚しかないとなると、なおさら辛いです。
そんなわけで、私もこのデッキは使う気になれません。
流行も一過性のものだと感じています。カマキリ使うなら紙束かバグバーンでいいと思います。
(あとこっそりリンクさせていただきました!)
もともとMOで流行ったデッキですがみんなが使う理由は
「安いから」でしたね。
セイント君さんのいうように、流行ってるのは”安いから”ということらしいですね。
安くて、そこそこ強ければそれでいいのかもしれませんが、
どうせ使うならトーナメントでしっかり勝てるようにしたいものです。
(と、ぼくは思っています)
いつも良記事たのしみにしています^ー^。
数少ないカウンターへの依存度が高すぎますよね。
リンクありがとうございます。
>セイント君さん
確かにMOではその理由は重要ですねw
>ラック(larryniven)。さん
確かにパージの方がいいですね。あまり積まれているのを見ないですが…
>シコザル先輩
最近はミラン土地も高いみたいですけどねw早めに集めておいて良かったw
瞬ちゃんは青使いとしての嗜みなので基本投資です。
>ヨッシーさん
DE、PEの結果を見る限りでは実力も伴っているようなので、もしかしたら自分もこのデッキでMOスタン復帰するかもしれませんw
応援ありがとうございます!